友達と散々遊び倒して夕暮れ。
一番星が見える頃、ようやく少年は帰路につく。
家のドアノブに手をかける。
ふと、鼻をかすめていく香りに、あ、と気付いた。
今日は彼の誕生日で、彼の好物がテーブルに並んでいて、きっと家族が祝ってくれるのだろう。それは毎年の事だ。
毎年の事だけれど、なんだか少し照れくさいような気がして、扉を開けるのを躊躇ってしまう。
それでも、彼を包む温かな香りとめどなく、家の中からは楽しそうな笑い声がした。
少年は、もう一度ドアノブに手をかけた。
そして、一つ息をして扉を開く。
「…ただいま!」